クラクラする頭と体は、音の濁流に飲み込まれていきそう。

流されないように必死に岸にしがみついてるんだけど、なんだかもう限界な感じ……。


中途半端に上げていた両手を、耳元に持っていこうとすると……。


突然、濁った濁流の中から、キラキラ光る大海原まで飛ばされた。

澄み渡る青空を見上げながら、澄んだ翡翠色の海の中に潜っていく──そんな、錯覚。


声、が。

ハルヒコくんの声が。

濁っていた音をひとつにして、綺麗にまとめ上げてしまった。


「すごい……」


みんなが飛び跳ねる中、私だけが棒のように突っ立って、ただ、ハルヒコくんを見つめていた。


相変わらず体を突き上げるような凄い音なんだけど。

けれど、今度はひとつひとつがキチンと“音”になって聞こえてきた。

勢い良く駆けていくギターと、それを追いかけながらもしっかり支えるベース。そして、全体を締めるドラム。

ああ、凄いな。

濁流から大海原へと変化した音の中で、ハルヒコくんの声が、力強く泳いでいくみたい……。