「凄い人だね~」

これじゃ、人の頭でステージも良く見えないかも、と思ったら。

「行くぜマユ、ハルカ!」

気合いの入ったナオちゃんの声とともに、グイグイに引っ張られて人ごみを掻き分け、最前列へと進み出た。

す、凄い、ナオちゃん。

「さあ~て、あたしのユウはどこだい!」

ユウさんっていうのは、ナオちゃんの好きなベース担当の人。

関西弁の喋る陽気な人らしいけど、ベースを弾いてる姿はクールでカッコイイんだって。


前から後ろから、右から左から押されて、イソギンチャクのようにユラユラ揺れて立っていると。

突然、物凄い歓声が沸きあがった。

その声にビックリしていると。

ステージ上に『グラポ』のメンバーが出てきた。


まずはドラムのタカさん。

タカさんは私に気付いてくれたみたいで、軽く手を振ってくれた。すると物凄い歓声が上がる。

凄い人気、タカさん……。