それを見届けてから、息をするのも忘れていた私は思い切り息を吐き出して、そして吸い込んだ。

はああ……心臓が止まるかと思った……。

だって、ギュッて……抱きしめられちゃった。

いや、単に倒れそうなところを助けてもらっただけだけど。

その前は、記憶に無いけど、またお姫様抱っこしてもらったみたいだし……。

今は頭をそっと撫でられたりして。

あの大きくて長い指で触れられたのを思い出し、また心臓がドキドキしてくる。

火照った頬を両手で包み込むと、ふわりとマリンブルーの香りが漂ってきた。


彼の香りが。

私に移ってる。


たったそれだけのこと。

なのに、どうしてこんなに胸が切なくなるんだろう……。


「ああ、駄目駄目、ハルヒコくんが戻ってくるまでに、元に戻さなきゃ」

パタパタと両手で頬を仰いで、なんとか熱を冷まそうとする。

ホント、いつも迷惑ばかりかけて、変な心配までさせたくないよ。

おまけにさっきは歌の途中で倒れちゃって……。きっと演奏を中断させたんだ。謝らなくちゃ……。