ぴちょっぴちょ
薄暗い夜の中、雨がしとしとと少女の上を降り注ぐ
「お母さん...お父さん..」
近所の人「まだ小さいのに。かわいそうねぇ」
近所の人「あんた引き取ってやんなさいよ」
近所の人「嫌よ。人の家の問題よ?」
近所の人「そうね、関わるなんてまっぴらごめん」
近所の人「これも運命ってやつよ」
立ち止まっている少女を通り過ぎるようにまた数々の口声も少女の耳を通り過ぎる
「うっうっ....」
一桁しかない年頃の少女は病気で親がいなくなってしまい行くあてがない。
(ガッ)
「なにが運命だよ」
少年は次々に少女の心を傷つける人たちの前に立ち塞がった
「そんなこと言ってるだけなら帰れよ」
そして少年は少女の元へと近づくと、手を差し伸べた。
「僕と一緒に住む?」
執事「おぼっちゃま!」
おぼっちゃまと言われる少年はお金持ちのようだ。
「なんだよ。文句でもある?」
「貴方は誰...?」
幼い頃の私は恐る恐る名前を聞く
「僕?僕は海斗だ!神川海斗!」
(ピッピッピッピー!)
「もう朝...」
のそのそと目覚まし時計を止めて私は起きる。
「ねむいなぁ」
昨日の夜に用意して置いたパンを食べ終えすぐに支度をする
「これでよしっと!」
一気に立ち上がった反動で少女のボブヘアがゆっくりと揺れ動いた
みなさんこんにちは!
今日から高校3年生になった白里真紀です!
「真紀、早くしろよー!置いてくぞ!」
この声の持ち主は幼なじみの神川海斗
超金持ちのぼんぼん息子。
見た目からはそんなように見えないのにね
でも、私を救ってくれた大切な人。
海斗があの雨の日に助けてくれなかったら私は今ごろどうなっていたか
海斗「そういえば真紀、本当に部活に入らなくてよかったのか?」
私たちは家を出て始業式を行うべく学校へ向かう。
真紀「なんで?」
海斗「いや、今更だけど真紀はあの時お金がかかるからいいって言ってたけど本当はやりたかったんじゃなかったのかって...」
真紀「大丈夫よ。勉強頑張らないと奨学金も貰えないもの」
それに、あの時は海斗が部活動費を払うって言ってくれた
いつまでも頼ってばかりじゃいられない。
海斗「すげーよなー。何でそんなに勉強やれるんだよ」
真紀「そういう海斗はもっと頑張りなさい!」
私は海斗にデコピンをした。
海斗「痛っ!なにすんだよ!」
くすくすっ
なんだかんだ言ってこのやり取りが1番楽しい
平凡で何も変わらない生活
ーーーでもまさかこれからすごいことがおこるなんて私たいは思ってもいなかった。
真紀「それより海斗は?部活の方どうなの」
海斗は昔から運動神経が良くて今は剣道部に所属している
何かと上手いっていう声は女子の中で聞こえてくるけど...
海斗「へへーん!大成功!」
ピースサインを出してきた。
真紀「もしかして前言ってた大会で勝ったとか?」
海斗「その通り!優勝だぜ!」
真紀「すごいじゃないっ」