まだ凍えそうもない、冬先の澄んだ空気にさらされたわたしの手はつめたい。

ゆっくりと触れた、じんわりとあたたかい彼の手は、すこし震えていた。

熱を持ち合わせているのではなく、明らかにわたしが奪ってしまっているけれど、からまった指が、言葉をなくした。


見上げたハルカは、すこし頬を紅く染めていて、微笑っている。




燻んだ色の空から、ぽつぽつと、屋上を雨の影が濡らす。まだ雪は降りそうもない。




しあわせ。しあわせなの。

心から願ったぬくもりが、あたたかくてまた涙が出てきた。今度はきっと透明。





燻んだ色の空は、真っ白だった。






【fin】