黙って聞いていた彼を見る。
さきほどの茶目っ気たっぷりの表情はもう無くなっていた。
「じゃあ神崎さんは今本当にフリーなんですね。」
「……虚しいから改めて確認しないでよ。」
小さく笑い、何故か背筋をのばし姿勢を正す彼。そして意を決したように、もう一度。
「神崎さん、」
「何よ。」
「やっぱりその何とかオイル、貸していただけませんか。」
……クレンジングオイルね。覚える気がないのなら別にいいけど。
真剣、といっていいものなのかわからないけど、真っ直ぐな視線をこちらに向ける彼。
……っていうか、そもそもどうして彼が私の家に上がってまでそれを使いたいのかがわからない。
クレンジングオイルなんて、今時コンビニですら手に入るのだ。
「そんなにほしいなら、コンビニ行けばあるよ。」
そう告げると、彼は驚いたような顔になる。
かと、思ったらすぐに呆れたような表情に変わった。
……呆れた?
どうして私が彼に呆れられなくてはならないのだろう。