すると上から静かに優しく囁くように小さい声が聞こえてきた
「純ちゃん…
俺はね?フツーの家に生まれたんだ
親父が社長なだけの
フツーの家に…
学校の子は俺を金持ち、良いとこの坊ちゃんなんて呼んでたけどフツーの家だったんだ
父さんと母さんがいて、兄がいる
フツーの家だった
兄が高校で家を出て、出る前に俺に言ったんだ
あの人たちの罠にはハマるな
ってね?あれはさ、父親が会社を大きくするために俺たちに婚約者を決めているらしい
誰だかはまだ不明だけど18で結婚をさせたいらしい
でもさ、その婚約者には悪いけど…
俺、純ちゃんが好きかも知んない
初めてなんだ。誰かをこんなにも愛おしいと思ったのは
誰かをこんなにも幸せにしてあげたいと思ったのは」
そう言い先輩は体を離して目を真っ直ぐに見てきた
すっかり泣き止んだ私は頭の混乱を見せぬように真っ直ぐに見つめ返した