「純ちゃん
話してごらん?」


俺は男になる前の自分について話し始めた


話し始めると一言も喋らずに優しく見つめられていた
話を終えると彼の温かい手が頭に乗りさっきとは比べ物にならないくらいに優しすぎる声で


「悪いな……
事情も聞かないであんなことして」


俯きながら言った
家族を亡くしてからまだ3年しか経ってないのにこんなにもスラスラと人に話せるものなのだと不思議な気持ちになった


少し悩んでいると


「俺、始めは女か男か分かんなかったんだ
俺の親が人と関わる仕事しててさ、いろいろな奴がいるんだ


女装してる奴もいるし男装してる奴もいる
お前見たときももしかしたらって思ったんだ
でもよ、あまりにも男装が似合っててカッコいいって思っちゃったよ」


なんておどけて笑って見せた
親がきちんと今もいるんだ
なんて馬鹿げたことを考えて事故の日を思い出した


ーーーーー少し肌寒い満月の夜
車で海に行った帰りだった
お兄ちゃんに囲まれてお喋りをしながら帰っていた


一言………たった一言………
ーーふせるんだ‼︎ーー
父が大声を張り上げて言った
体が大きく揺れて父に抱き寄せられた


気がつけば病院のベッドで
誰も……誰もいなかった