私の騎士は陰陽師君

つまり、賀茂君は
由緒正しき家系の
陰陽師ってこと。
…私の中途半端な様とは、
まるで正反対だった。
それでも、言うべきなんだろうなぁ。
聞いてしまった以上。
「私は…」
「あ、ちょっと待って」
私が心に決め、話そうとすると
賀茂君は「言い忘れてた」と言った。
「でも、俺家を


追い出された身なんだよな」
「え?」
つい、聞き返してしまった。
せっかく人がシリアスな
気分になってたのに?!
追い出されちゃってたんだ…。
なんだ、そうなのか…。
ちょっと…安心した。
「あ、今笑った?」
「…笑ってない」
「笑った、笑った!
清水さん笑顔のがいいよ」
賀茂君は爽やかなくらいに、
声を上げて笑っていた。
「な、なにが面白いの?」
私が尋ねると、
「いや、なんもないよ」
と言ってまた笑う。
私も、つられて笑ってしまった。
ああ、変な感じ…。
この人なら信じてもいいような…、
そんな気分になった。
ひとしきり笑うと
「さ、清水さんの秘密は?」
と賀茂君は私を促した。
いいのかな、言っても。
いいんだよね?
それじゃあ話そう。
小さな私の、最大の秘密を。
私のお父さんは吸血鬼。
私のお母さんは普通の人間だった。
2人は恋に落ち、私を身ごもった。
結婚しようとしたけど、
すごく反対をされて
お父さんは殺された。
お母さんも私を産んですぐに
亡くなった。
私はお母さんの親戚に預けられた。
幸い、そこではとりわけ
酷いこともされずに済んだ。
普通なら、吸血鬼と人間の子供なんて
可愛がってもらえないんだけど。
ちなみに、吸血鬼と人間のハーフを
「ダーピン」と言うんだって。
だから、私の本名は清水美華じゃない。
吸血鬼は日本にはいないものだから。
漢字の名前なんて、普通はつけないの。
…私は完璧な吸血鬼ではないんだけどね。
ミカエラ・イッリバート。
イッリバートは、イタリア語で
「穢れのない」っていう意味。
ミカエラは、
キリスト教の天使・ミカエルから
とられたもの。
イッリバートは一応父方の姓で、
ミカエラは私の母親がつけたんだって。
父方の姓は「穢れのない」
っていう意味からして、
血統をすごく重んじる家系だったみたい。
そりゃあ、人間と結婚しようなんて
殺されて当然だよね。
お母さんはダンピールの私に
天使の名前をつけるなんて、
どういう気持ちだったのか
知らないけどそれが私の本名。
イッリバートは、「穢れのない」
つまり「綺麗な」とも取れるから
清水と置き換えられ、
ミカエラは短縮して美華になったの。
これくらいかな。
私の秘密は。
これも全部、
叔母さんが教えてくれたから
本当かはわかんないけど、
私がダンピールっていうのは
本当だよ。
「…こんな感じ」
いつも、こんなに長く喋らないから
少し疲れた…。
「つまり、清水さん?は
半分吸血鬼だから
影の中に潜めるってこと?」
「まあ____そういう感じ」
というか、影から出たら
すごくダメージを食らうから。