第三会議室には機動捜査班の他に初動捜査班の班長ガリウス=グランもいた。捜査員はまだ捜査中ってことなんだろうか。
オレはリズと並んで機動捜査班の末席に着く。関係者がそろったところで、二課長とガリウス班長から事件の概要が説明された。
それによると、ラフルールの港湾地区にある性風俗店カベルネが盗難に遭ったと、担当している警備会社から通報があったらしい。
カベルネの営業時間は十八時から翌朝十時までで、警備システムが作動しているのは昼間になる。たとえば不審者が付近をうろついていたとしても、一般人もうろついている昼間なので気づかれにくい。
警備会社が不審に気づいたのは、入退室データが改竄(かいざん)されていたからだ。監視カメラに不審者の姿はなく、入退室データにも記録はないが、データの方が元々あったものをなかったかのように書き換えられていた。
人に見つかるリスクを負って、短時間でデータを書き換えたとなると、犯人は人間ではないかもしれない。というわけで、特務捜査二課に捜査依頼が来た。
店が被害に遭ったのは三日も前で、犯人はとっくに逃走している。犯人が特定されるまで、機動捜査班の出番はなさそうだ。もう見つかったのだろうか。
それはラモット班長も気になったようだ。
「犯人の目星は?」
ラモット班長が尋ねると、二課長は困ったようにガリウス班長に視線を送る。ガリウス班長は言いにくそうに事情を説明した。
「それが、なんか変なんだ。カベルネの店主は被害者のはずなのに、どうも怪しくて」
「怪しいって、どんな風に?」
「犯人に捕まって欲しくないように感じる」
「はぁ?」
訝しげに眉をひそめるラモット班長に、ガリウス班長は理由を話す。