人工知能、通電開始。
記憶領域、エラーチェック中。
正常。
システム領域、エラーチェック中。
正常。
オペレーティングシステム起動。
絶対命令プログラム起動。
人工知能起動。スタンバイ。
なんだ? これ……。
真っ黒な視界にバラバラと文字が表示される。意識がはっきりしてくるにつれて、それが見たこともない幾何学模様であることに気づいた。
けれどなぜか、それが文字であることも、どういう意味なのかもオレにはわかっている。
そして、視界が真っ黒なのは、目を閉じているからだと気づいた。ゆっくりと目を開く。真っ白な天井が目に入った。
どこだ? ここは。
オレは接待ゴルフの最中、雷に打たれて死んだはずだ。確かに死を自覚した。
けれど、それは気のせいで、もしかして運良く助かったとか? てことは、ここは病院?
一瞬そう考えたが、すぐに違うことを悟る。なにしろオレが寝ている場所が、柔らかい布団の上ではないからだ。おまけになぜか全裸。
両手を体の横について起きあがったら、勢い余って尻が浮いた。
「おわっ!」
あやうく足の間に頭をぶつけそうになる。体がやけに軽い。
って、声がおかしい。ちょっと待て。これオレの体じゃない。肌の色は白く、手も足も華奢で細い。一応、男ではあるようだが。
そして、目の前にハラリと垂れ下がった髪の毛からは色が抜けていた。
雷に打たれたショックで白髪になったとか?
そんで何日も生死の境をさまよって、日に当たらなかったから色白になって、寝たきりで筋肉が落ちたとか? そんなバカな。
だったら、こんな固い診察台みたいなとこに寝てるわけないだろ。