夜にセットしておいたタイマーが作動し、オレの体は省電力モードから通常モードへと切り替わる。エネルギーが体内を流れ、オレは目を開いた。一応、省電力でスタンバイ中は目を閉じている。
 部屋の中はまだ薄暗い。オレは鬱蒼とした植木ジャングルの中に座っていた。

 家庭用の電源から充電はできるけど、ヒューマノイド・ロボット用の純正の充電器があるというのに、ゆうべは電源プラグと共にリビングの隅に追いやられたのだ。というのも充電器はリズの部屋の中に設置されていたからだ。

 痛い命令のせいで、近づくこともできないというのに、同じ部屋にオレがいると気になって眠れないとリズは言う。
 気にしすぎだっての。省電力モードのオレは全思考回路が停止してるから、なにも考えてないことくらい知ってるだろうに。置物と一緒。

 まぁ、センサは生きてるから、リズが寝言を言ったり、いびきをかいたり、寝相が悪くて布団の中で暴れてたりしたら、全部わかるけどな。

 ……やっぱ、イヤか。それ知られるの。

 電源プラグを抜いて立ち上がったオレは、リビングを出て、隣のダイニングを突き抜け、まっすぐキッチンに向かう。
 まともな夕食の次は、まともな朝食も食べてもらおうじゃないか。
 オレは袖をまくって、フライパンを電磁調理器の上に置いた。



 窓から朝日が射し込み始めた頃、ダイニングテーブルにはオレの作った朝食が並んでいた。
 表面を軽く焼いたロールパンと、カリカリに焼いたベーコンとスクランブルエッグに、昨日の残りの野菜サラダ。やっつけにしては上出来だと自画自賛しておく。少なくともリズがいつも飲んでるサプリよりは遙かにマシだ。