「まあ、美咲の為にあの大変な仕事をなげうってまで来たのだろう。
　きっと今頃君の父上は大変なことになっているのじゃないか？」

「まあ、そうかもしれませんが、今まで私は父に頼みごとをしたことがありませんでしたので、意外と父は嬉しそうな顔をしていましたよ」

「そうか…まあ、そうは言っても急いで帰ってあげなさい。
　今日は悪かったね。」

「いえ。また後日。きちんとした形でご挨拶をさせていただきたいと思います」

幸樹さんは父にそう告げつと、頭を下げてから玄関に向かった。

『ごめんなさい。なんだが良く分からなくて…』

「いや。でも良かった。
　美咲がすぐに電話をくれて。
　今回は相手が俺の予定だったから結果的には何も問題はないけど、
　違う相手だったらって思うとぞっとするよ。
　俺の美咲だ。誰にも渡さないから…」

幸樹さんは私の頭にそっと口づけをするとまた会社に戻って行った。

そのあと、父に色々と聞かれたが、適当に流して、その場を治めることにした。