あの誰かは、私より2階手前でエレベーターを降りていった。
次に扉が開いた時、私の緊張はピークに達した。
ミュージックスクールのドアを開け、中に入ると、思いのほか事務所の感じが強いことに、緊張が解けた。
受付を済ませると、壁際にある長椅子に座り、待つように言われた。
緊張が過ぎると、再び、あのワクワクやドキドキが戻ってきた。
小さな頃から、私は歌を歌うことが何よりも好きだった。
歌番組を見ては、憧れの歌手を真似て歌ったり、実際にオーディションなんかにも応募して、本気で夢を追いかけたこともあった。
だけど、いつからか、夢と現実を天秤にかけるようになり、歌手になりたいなんて言わなくなってしまった。
何年ぶりだろう…?
名前を呼ばれて、事務所の奥に並ぶ、スタジオの一室に招かれた。