門をくぐる前から見えていた白く大きい、お城みたいな家。

花の多い庭はお母さんの趣味だ。

部屋も有り余っている。


「お嬢様!?」


歩いて帰ってきた私に、メイド達が驚いて駆け寄ってきた。

素早くカバンが受け取られ、丁重に扱われた。


「お母さん、いる?」

「いらっしゃいますよ!旦那様も」

「お父さん帰ってるの!?呼んでよー」


私は嬉しそうにブレザーをメイドに渡すとお母さんの部屋に向かった。


「ただいまー!」


部屋に入ると二人は驚いたが、すぐに優しそうな笑顔を浮かべて「おかえり」と言ってくれた。

お母さんは日本の有名食品メーカーの会長で、お父さんはアメリカにある大企業の社長だ。

お金は有り余っているが、全然帰ってこない二人に寂しさを感じることも少なくなかった。

二人も全然会えてないだろうから…邪魔しちゃったかな?


「晴也君はどうしたんだ?」

「あ、そのことなんだけど…婚約破棄してくれない?」

「え!?喧嘩でもしたの?」


放っていても一緒にいる私たちだから、かなり驚いた二人。


「違う違う、私のただの我が儘だよ。別に私たちが結婚しなくてもどっちの家も安泰だし」

「…そうなの?東雲の家が納得するかしら」


…それは、どうだろう。

晴也の祖父は私的には優しいおじいさんだけど、晴也曰く怖い人らしいし。


「納得してもらうしかないよ」

「学校の方はどうするの?」

「そのままでいいよ、でもここから通う」


お母さんとお父さんは余計に質問せず、私の言うことを聞いた後も今の学校の話を黙って聞いてくれていた。