「ここでは、その呼び方はやめて」

「はい!申し訳ございません…!」

「敬語もダメ。普通の生徒と同じような対応が出来ないなら関わってこないで」


私の冷たい言い方に男はどうしていいか分からずあたふたしている。


「あれ?校長、どうしたんですか?」


職員室から出てきた優しそうな男が校長に向かって首を傾げる。

恐らく、私の担任だろう。


「トイレに急いでるところを引き止めてしまったので、慌てているんですよ。すみません、どうぞ行ってください」


目で「行け」と命令すると、小走りでトイレに向かった校長。


「マスクとサングラスはどうしたんだい?」

「サングラスをつけていないと落ち着かなくて、マスクは風邪予防です」


落ち着かないなら、仕方ないかな?と流してくれた担任に安心した。

先程チラッと覗き込んだ職員室にはヤクザか?と思えるような奴もいたから、マシな教師のところに入れてくれたのだろう。

校長はどうしても問題を起こしたくないようだ。


「僕は1-6の担任、暁(あかつき)だから暁先生って呼んでくれたら嬉しいな」

「分かりました」


丁度鳴り響いたチャイム。

暁先生の背中について教室に向かう。