「機転が利くのはいいことじゃないか?」


晴也は正面にいるのに、なぜか声が背後から聞こえた。

それも割と低くて、つい先程聞いたような…

恐る恐る振り返ると、やっぱり


「神村さん」


晴也がスッと私の前に出た。


「別に何かしようってわけじゃない。東雲君は気付いていたようだけど、彼女は気付いていなかったようだから、反応を見たくてな」


なんて性格の悪いおじさんだ。

晴也の肩に力が入ったのが見て分かった。

晴也の家の方がお金はあるし、伝統もあるが、神村の手にかかるとダメージは小さく済まないだろう。

それでも私を守ろうとした晴也を脳内で表彰しておく。