前の学校は俺の親と咲の親の地位をきちんと理解し、自分のためにも親のためにも咲に手を出したり変な素振りを見せる奴はいなかったのに…
前以上に警戒が必要になった。

自由すぎる許嫁は俺の気持ちなんて全く考えずに行動する。

たちが悪くて面倒臭い許嫁だけど、誰よりも大切な人だから、手放したくない。絶対に。



「咲」

「晴也?」

「職員室、ついていく」


俺がそう言うと、咲はちょっとだけ考えて「分かった」と返した。

担任に何かあるのだろうか?と思ったが、職員室につくと嫌でも分かった。

満足気な顔を咲に向け、俺を見るなり冷たく睨んできた。

咲が驚かずに嫌そうな顔をしているということは、この男。すでに行動に移していたな?


「東雲、なんでお前まで来た?」

「許嫁なんで、少しでも近くにいたくて」


担任が、帰れよオーラを出してくるが無視して咲の手に自分の手を絡める。


「話をどうぞ?」


挑発するように口角を上げて言うと、担任は舌打ちをしてから咲を見た。

教師のくせに堂々と舌打ちするなよ。

こいつには伝わってるはずなんだけどな…俺の本当の高校とここに来た理由。


「城ヶ崎、これから俺の授業をサボるたびに同じ時間分、個別補習をつけるからな?」

「は?そんなの嫌ですよ」

「来なかったら東雲とクラス離すから」


うっ…と押し黙った咲。

権力には権力で対抗すればいいものを、咲はそうしない。

楽しいことを探しに来たのだから、何事も権力で解決したらつまらないってことか?

咲の意見は出来るだけ尊重したいが、この男は放っておけば厄介だ。

権力以外の方法でこいつを潰す方法…

問題は増えていくばかり。