俺の許嫁はたちが悪い。

透き通るような肌に、手入れなんてろくにされてないのに枝毛一つ無い髪。

それに意思の強そうな目を中心としたバランスの良い可愛らしい顔立ち。

どれだけ大切にしていても、ふとした時に俺の腕からすり抜けて行ってしまう。

話したこともない奴のために全力で殴り合いだってする。

その時の自分の気分に忠実で、他人でも助けて当然だと思っている。

あれだけ放任主義な家庭で、よくここまでまっすぐ育ったと思う。


「…俺は一応、味方だから」


クラス中を敵に回したと言っていた咲に話しかけている男を見つけた。

顔を見てから手の平返しやがって。

咲がいじめを止めようとしたのを遮って俺が前に出た時もそうだった。
後ろから顔を出した咲に男子の視線が集中した。


「あ!昨日のやつ!」


と咲がいじめっ子の中で、顔に包帯を巻いている奴を指差すと何人かの男子はハッと気付き動いたが、残りは咲を見惚れて現状が分からず固まっていた。