「悠哉のこと無視するわけ?随分いい度胸してんじゃない」

「やめろ、礼奈(れいな)」

「悠哉はねぇ、大和グループの会長の三男なんだからね?」


大和グループ?って…もしかして財閥の?


「礼奈、親の立場なんて俺には関係ない。そんなので人の上に立つなんて俺は嫌なんだ」


礼奈は悠哉の言葉に頬を赤らめている。


「その礼奈って子、彼女?」

「あぁ」

「お母さん、認めてるの?」

「それは…「もちろんよ!」


口をつぐんだ悠哉に代わって礼奈が答えた。

これは嘘だな。

あの人がこんなのを息子の嫁に認めるはずがない。


「それに悠哉はね!暴走族の総長までしてるんだから!」


終わった。

大和グループ終わったわ。

こんなのが息子にいるなんて…

まぁ、三男なのがせめてもの救いか。

長男は確かもう少しマシで…


「何黙ってんのよ!格の違いに言葉すら出てこなくなった?」

「いや、三男はやっぱり三男だなぁと思って。さぞお兄さんが苦労するでしょう?こんな素行の悪い学校に入ってバカな集団の一番上に立って、さらにアホな彼女まで持って…」

「黙りなさい!」


礼奈がヒステリックに叫んだ。

その横では悠哉が下唇を噛んでいる、コンプレックスにでも感じていたのだろうか?兄達のことで。

でも、言い過ぎたとは思っていない。

その世界にいた私からしたら、こんなところで甘ったれているやつにかける情けなんてない。

私は家を継ぐ必要は無いから、周りとの良好な関係を築けばいいだけで、それも大体出来ている。

これは幼いことから努力していたら誰にでも出来る。

そんな簡単なことすらせずに逃げている