目線の先では携帯で誰かと話しながら
校門の前に止まっている
黒塗りの車に乗る悠斗の姿が見えた


「何?面白いもんでも見えんの?」


背後から百瀬が
コーヒーを入れたカップを手元に置き
後ろから私の髪に顔を埋めるように
抱きしめる


「ねぇ、モモ…」


車が去り空を見上げると
雲一つない青が広がっていた


「ん?」


百瀬は私の髪に顔を埋めたまま
軽く相槌をうつ


「これから楽しい高校生活始まるね」


私は小さくなって行く車を見送りながら
コーヒーを一口飲み笑った