ほどなくして、蒼太がアイスコーヒーを持ってきて差し出した。
 遠慮なく受取りながら、早速本題に入る。
「なぁ……お前さ」
「はい」
 向かいに座った蒼太は、何の疑念もない顔でアキラの方を見ている。そう真っ直ぐ見られるとなんだか話しにくくも感じるが……でも、ここは大事なとこだ。
 聞くべきことは聞いておかねばならない。
 妙な使命感じみたもので、自らに喝を入れてアキラは口を開いた。
「紅葉のどこがいいの? こういっちゃなんだが、同情とかそういう類ならよしたほうが……」
「同情?」
 蒼太が不思議そうな顔になる。
「いや、お前、いい人っぽいからさ、かわいそうとか、そんなんで一緒にいるのかと」
 あまりに素で不思議そうな顔をして蒼太がこちらを見るので、なんとなく気まずくなりアキラは口ごもる。
 蒼太は少し困った様な笑顔で、口を開いた。
「最初は、一目惚れだったんです」
「は?」
 アキラは目が点になった。
「夜の公園で初めて会ったんですけど。ほんとに綺麗で……」
 少し恥ずかしげに話す蒼太をアキラはまじまじと見つめた。
 確かに紅葉は綺麗だが、たいていの人間はその髪の色や瞳の色に驚き、ひくものだ。
 だが、蒼太の表情に嘘らしきものは感じられない。
「同情、とは違いますけど、色々大変だろうなとは思いました。力になりたいと思ったのも確かです」
 アキラは、静かに語る蒼太の声に、思わず聞き入ってしまう。
「でも、気が付いたんです」
 そう言って、蒼太は目を伏せた。