「それは……。」
ゴクリ。
みんなが緊張しているのがわかる。
「5組の山崎 葵(やまざき あおい)君よ。」
「………。」
「え、ええええええ!?」
「な、なんでわかるの!?」
「やば、香里奈やば!!」
2年3組の教室。
今は昼休みが始まったばかり。クラスのみんなで集まって話している。
「なんで!?なんでいつも香里奈はわかるの!?」
話題は、もちろん恋愛系。
「さすが…巫女だね。」
巫女、それはあたしの異名みたいなもの。
あたし、卯川 香里奈(うかわ かりな)はちょっとかわった特技(?)を持っている。
「ほんと、みんなの好きな人当てちゃうんだもんね。」
そう、それは神通力のようなもので。
目で見えない、色々なことがわかっちゃうんだ。
人の好きな人を当てることが趣味じゃないんだよ!?わかっちゃうだけで!!
「はは。でも、ただの勘なんだよ?」
根拠はなくて、ピーンと来ただけ。それが当たっている。そういう感じ。
「じゃ、ちょっとトイレ~。」
キャハキャハ騒ぐみんなを置いて、席を立った。その時。
「(…あ。)」
頭に浮かんだのは数学の先生の顔。
なんだろう…。今からトイレに行く途中で合うかな?
ぼんやり考えながら教室を出た。