走る姿が

凄く、綺麗だったんだ。


背筋を伸ばして

前を向いて

サラサラした髪をなびかせながら

走っている姿。


「…すご…っ」

気が付くとあたしは、フェンスにしがみ付きながら彼女を見ていた。


もっと近くで

もっともっと見ていたい。

「里田、12秒2!
なかなかいい走りだったぞ」

「どーもっ」


走り終えて、汗を拭きながらドリンクを手にした彼女は

ふと、あたしに気が付いた。


「…入部希望?」

ニコニコと近寄って、尋ねてくる彼女。

「えっ、いえ…違いま…」

言い掛けたとき、目の端に見えた部室の戸に貼られた

"マネージャー募集"

の貼り紙が目についた。



マネージャーになったら

彼女の走りをもっと見ていられるかもしれない。


「ま、マネージャー希望です」