別れ際


ひかるは、涙で濡れた唇で

そっとオデコにキスしてくれた。



翌日、あたしはひかるを電話で、家に呼び出した。


「話って、何?」

「とりあえず、中に入って」


ひかるは、無言で頷いた。

「こっち来て」

何も言わないひかるを、あたしは二階に連れて上がった。

そして、ある部屋の前で立ち止まった。


「波…音?」

あたしは、横にいる、ひかるの腕を掴み

その部屋の中に引っ張った。


「ちょっ、はの…っ」

バタン――

ひかるが出てこないように、外から衝立てをして

あたしはベランダから中の様子を伺った。


部屋にいるのは、ドアの前でへたれ込むひかると

驚いたようにひかるを見つめるお兄ちゃん。


あたしは見つからないように

そっと窓から顔を覗かせた。


ひかるが、お兄ちゃんのほうを見た。

どうやら目が合ったようだ。


互いの顔が赤くなる。


お兄ちゃんが、口を開いた。

「……好き…なんだけど」


単刀直入なお兄ちゃんの告白。

ひかるは、ただ泣きながら頷くだけだった。