和泉陽詩・・・。
ヒナタ、か。
僕の名前とは、遠い意味を持つな。
「和泉さんは、何かご依頼されたいことでもあるのですか?」
「はい。
あたしの友達が前に、ここで調べてもらって、下手に探偵事務所に探してもらうより有力だと聞いたので」
「依頼内容をお聞きしても?」
「はい。
あたしの、兄を探してほしいんです」
兄?
「あたしの両親はあたしが幼い頃に離婚して、あたしは母親に引き取られました。
この間、その母親が死んでしまって・・・。
母親は死ぬ間際、あたしには兄がいたことを教えてくれたんです。
両親は兄が生まれた時、経済状況が良くなかったみたいで。
兄を経済的な理由で養えないと判断した両親は、兄を施設の前に置き去りにし、経済面が安定したら迎えに行こうと決めたそうです。
暫く両親は働いて、あたしが生まれる頃には普通の家庭より裕福になるまでになっていました。
両親は兄を迎えに施設へ行こうとしたんですが、兄が施設でいじめにあい、その後施設を夜中抜け出して行方知らずになってしまったんです。
お願いします。
兄を探してくれませんか?」
・・・何だそれ。
僕の過去と、一致する場面が多すぎる。
僕に妹なんていないぞ・・・?
でも否定は出来ない。
妹は自分より下。
生まれてすぐ捨てられた僕が、妹の存在なんて知るはずないじゃないか。