ドアが開いて―閉まった音がして―


運転席に中堀さんが座ったのがわかる。



「家まで送る。」





甘い、香り。

切ない、香り。


そして、微かな煙草の、ほろ苦い香り。



あーあ。


風邪、治ってなかったんだなぁ…


呑気(のんき)にそんなことを考えながら、私は意識を手放す。



外はすごく寒かったから。


エアコンの効いた暖かさと、かけられたコートの温かさ。


それでなんか幸せになっちゃって。


瞼が重くて開けていられなくて。



自分のした失敗に、全く気付いていなかった。