「!?」



驚きはするけれど、抵抗するだけの力は私には残されていない。



でも、これは。。


確か―


お姫様抱っこっていう―


世界中の女の子が一度はやってみて欲しいと憧れるソレではないか?


決して軽くはない私を軽々と持ち上げているように思う。



「ちゃんとつかまれ」



中堀さんの首に腕を巻きつけるように言われて、必死にそうする。


パッと見細いのに、実はしっかりとしている中堀さんの首筋に、昨日のことがフラッシュバックしそうになって、ぎゅっと目を瞑った。




「車、すぐそこだから、ちょっと我慢してろ。」



中堀さんが歩き出したのが、振動でわかる。



中堀さんとくっついている部分が、温かい。



いつの間にか、雪は止んでいた様で、頬に冷たい感触は落ちてこなかった。



「―ほら」



やがて車の後部座席にそっと下ろされる。


エアコンを切ってからあまり時間が経っていないのか、それとも外が極寒すぎるのか、車内は温かかった。



重たい厚手の生地が身体に被せられたのがわかる。



続けて、バタンとドアが閉まった音がして、さらに温かくなった。



あ、なんか、これ。


中堀さんに抱きついてるみたいな錯覚に陥る、かも。


優しく掛けられたコートを、高熱で震える手できゅっと軽く抱き締めた。