「乃々香ちゃん、どうしたの?」



志織さんの声が、遠く聞こえる。


ごめんなさい。志織さん。


この人は、貴女のモノなのに。


今、甘い香りが私を包んでいます。


その上大変申し上げにくいのですが、私はこの香りが好きです。



「ごめん、志織。これからの予定だけど、ちょっと俺乃々香連れて帰ってもいいかな?今車持ってくるから、とりあえず家までは送るから」



「ううん!いいのよ。乃々香ちゃん、苦しそうだもの。私はタクシーで帰るから。早く寝かせてあげて。」



「…大丈夫?」



「何言ってるのよ、まだ9時よ?子供じゃないんだから」



「……わかった。気をつけてくれ。さっきの話は、とにかく保留っていうことで。……取り乱して、すまなかった。」



多分そんな感じのやりとりがあったように聞こえた。


話し声が止まったな、と思った途端。


今度は、私の体がフワリ宙に浮いた。