し、知ってたのか…


なんだかそれだけで少しほっとしてしまう自分は一体何なんだろう。



「勝手なことして迷惑掛けたんじゃないのか、って志織に言ってたんだよ。」



佐藤一哉としては聞いたことのない位、いつになく厳しい声で彼は溜め息混じりに言った。



「…ごめんなさい。乃々香ちゃん。」



そのことで。


さっきからこっぴどく志織さんは怒られていたのか。



あぁ、力が抜ける。


志織さんが会社に来たことで慌てて、水曜に私がわざわざ中堀さんを探しにクラブに行ったのも、木曜にも結局伝えられないままあんなことになって悶々としたのも、取り越し苦労だったわけか。



中堀さんは、ちゃんと知ってたんだ。


ほんとに私って、ばかだなぁ。






「乃々香…?」


ぐらぐら、する。


視界はとっくにぼんやりとしていた。


雪とか、ライトアップとか、噴水とか、寒さとか、疲れとか。


そんな様々な要素が上手い具合に絡み合って、ぼんやりとした景色に見えているんだろうと一人で納得していたんだけど。



「あ、の。大丈夫ですから…」


声もなんとなく、出しにくいな、なんて不思議に思いつつ歩こうとするも、ふらついた。



「大丈夫?」



そんな私を目の前の嘘兄が支えるように抱きとめる。



「あっつぃな」


低く囁かれたその言葉に、少しだけ笑えた。


あぁその声は。


中堀さんの方ね、と。