わざとらしい程に、ピタリと声が止み、辺りを水のシャラシャラという音だけが満たす。


赤から黄色へと変化した噴水のライトが、眩しい。



「………乃々香?」



怒りを含んださっきまでとは違い、完全に不意をつかれた人のような声で私、じゃなくて妹の名前を呼ぶ、嘘兄、中堀さん。



「え?」


こちらに背を向けていた女性も振り返って私を見た。



「の、乃々香ちゃん…」



今日も輝かんばかりに美しさを放つ志織さんは、表情に若干の陰りがあるように見える。



「こんな寒い中!歩いてきたのか?」



3メートルくらいの距離を縮める嘘兄は非難めいた言葉を当ててくるが。


指示したのはアナタでしょうよ。


「家に帰る時はタクシーを使えっていつも言ってるじゃないか。連絡くれれば迎えにだって行ったのに。」



私の目の前に来て、はぁ、と軽く頭を抱える彼にふと気付く。


あぁ、そう言えば。


ここは、中堀さんの家に近かった。と。


隣の駅の最寄だし。



そう考えると失敗した、と思う。


私の会社から駅まで徒歩5分程。


電車で来れば良かった。


あ、だけどそうするとこの公園の前を反対側から通ることになるわけで。


銀行側から歩いてこなくちゃとばかり考えていた私は、やっぱり正解だったのか?


いやいや、駅の反対側に降りて回り道して歩いてくればよかったのか。


じんじんと冷えきって痺れてる足。


目の前には困った顔して怒る兄。


えー、、と。



「ごめんなさい…」



多分、中堀さんは私がまさか会社から歩いてきたとは思っていないだろうけど。