「あ、39分だ。」


銀行前で手をポケットから出して時間を確認して、本当にぴったりな私の足の速度に驚く。


中央公園はもうすぐそこに見えている。


10分ごとにされる噴水と光の演出が、そろそろ始まる頃だ。


胸をどきどきさせながら、私は噴水広場に向かって歩く。


広場は赤い煉瓦でできていて、植木と同間隔でベンチがある。


その真ん中に位置する、煉瓦が囲う噴水。


暖かな色の白熱灯が辺りをロマンチックに照らす。


いつもは恋人たちで賑わうその場所は、雪のせいか閑散としていた。



だから。


一目瞭然。


言い争っているように見える恋人が、誰なのか。



噴水は幻想的にライトアップされ、高くなったり低くなったりしながら雪と共演している。


私はその広場に入る少し手前で立ち止まって、噴水のまん前で言い合う男女を見つめた。


正確には言い合っては居ない。


一方的に、言っている。


合間に聞こえる、咳払いの音。



―中堀さん…何やってるのよ。。




かなり声を掛けるのを躊躇う状況だが。





「なっ…じゃなくて…おに、おにーちゃん!!」




勇気を振り絞り、私は叫んだ。