チッ

心の中で舌打ちする。


どいつもこいつもカップルばっかり。


私は下を向いてまた歩き出す。


さっきよりも少し早めに。



実際はわかってる。


恋人っていう甘い響きが、実は苦くもあること。


それぞれ秘密を持っていて、相思相愛なんて滅多にないこと。


だけど、やっぱり女の子だから。


夢を見ちゃうんだ。


それくらい、許されてもいいかなって思うんだ。



王子様とか、自分だけのヒーローとか。


誰かが夢見てたら笑っちゃうんだろうけど。


でも絶対誰もが、そんな人が居たらいいなって思ってるんじゃないかな。


中堀さんは、私にとってまさに理想通りの人で、これで性格があんなんじゃなくて、もっとまともな人だったら間違いなく堂々と好きだと言っていることだろう。


むしろ、もっと前に出逢えていたなら。


彼も私も、こんなんじゃなかったのかな。


夜道をひとり歩きながら、そんなとりとめのないことを考えた。




今より強くなるわけでも、弱まるわけでもなく―


雪はただ静かに降りてくる。