「あ、おはよう、憲子。昨日はありがとう。大分、よくなった。」



マイボトルとバッグをそれぞれデスクに置きつつ、憲子にお礼を伝えると、



「ま、良かったよ」



憲子はやれやれと肩を竦めて見せた。



「…あと、忠告も。…私、ちょっと昨日は熱でおかしくなってたみたい」



私は椅子に腰掛けながら、少しの反省を籠めて呟く。



「え、それじゃ―」


言いかけた憲子に頷いて見せた。



「深入りはしない」



「…本当に、できるの?」



真剣な表情で返してくる憲子は、私の決意の程を推し量っているみたいだ。



「あと9日経てば関係なくなるんだし、なんとかなるよ。」



私は重い雰囲気から脱するように、わざと明るく言いながら、パソコンを立ち上げる。



「おはよう」



ちょうどそこへ課長が出勤してきたので、憲子との会話はそこまでとなった。



「…本当に、関係なくなればいいんだけど…」



苦虫を噛み潰したかのような顔で呟かれた憲子の独り言は、メールチェックし始めた私の耳には届かなかった。