「昨日、櫻田さんが休んだ日、受付にお兄様が会いにいらっしゃったのよ。『携帯で呼び出されたんですが、途中で途切れて繋がらなくて』って。それでこっちに電話が掛かってきたんだけど、貴女お休みでしょう?お伝えしたら、『具合が悪かったんですね。』と心配そうにしていらしてね。お仕事の手が空いたら行って見るって仰ってたのよ。」



あぁ、本当に素敵なお兄様だこと。


このお局まで、まさか味方に付けるとは。



「…そう、ですか。ありがとうございます。。」


同じ血が通ってるなんて思えなーい、とさらに嫌味のオンパレードをしている椿井さんに一応お礼を言って、背中を向ける。



急いで携帯を開き、着信履歴を調べた。



「…あった…」



山のような憲子からの着信で、気付かなかったが。



確かに、木曜の朝。


5時13分に。


中堀さんからの着信があった。




恐らく。


この電話に出ず、挙句電源を落としたりしていた私のせいで、中堀さんは会社までご足労し、私が風邪で休んでいることを知ったのだ。



「…だから、家にきた時わかってたのか…」



納得して小さく頷きつつ、総務課のドアを開く。



―あれ。


私はふと疑問に気付く。



昨日は何の用事で来たんだろう。


私が寝込んでるなら、任務遂行は難しいこと、わかっていただろうに。


わざわざ、家まで来てくれなくても良かったのに。


クラブにもうくるな、ということを伝えにきたのかな。




「おはよう!花音、もう大丈夫なの?!」



ぐるぐる考え込んでいる私の傍に、先に出勤していた憲子が飛んできた。