私の隣に座りビールを注文して「昇進おめでとー」の言葉を口にした後は黙ってしまった亨
「亨…私ね、このカクテルを飲み終えたら帰るから話があるなら早くして…」
結局私から切り出さないといけないのかと思った矢先
「美加…ごめん…会社の後輩の相談に乗っていたら、その…そうゆう関係になった。彼女は現在妊娠2ヶ月目に入ったらしい…俺は彼女と結婚する。だから俺と別れてくれ」
亨はカウンターにぶつけそうな勢いで頭を下げて謝ってくる。
どんなに心の準備をしたとしても、言い様のない衝撃を受けるのは致し方のない事。
でも私に一体何が言えるというのだろう?
ここまできたら何を言ってもどうにもならないのは分かっている。
それなら私がしなければいけない事を済ませてしまおう。
「亨…これ返すから私のも返してハイ!」と言って亨の部屋の鍵を返した。
「…あぁー」とおたおたしている亨からキーホルダーを受け取り自分の部屋の鍵を抜き取る。
「私の部屋に残っている亨の私物は必要?服以外たいした物はなかったはずだけど…」
「…いらないかなぁー…」おどおどと返事をする亨
「分かった処分しておくね…私の物も必要ないから処分しておいて
それからスマホ出して!」そう言ったら怪訝な顔を私に向けたから思わず笑いそうになる。
「彼女に電話しろ!なんて言わないわよ…私のアドレスを消去するだけ…」モタモタしている亨からスマホを取り上げて私が自分のアドレスを消去した。
「私のスマホから今、亨のアドレスも消去した…これでおしまい。
さすがに結婚おめでとう…は言わないわよ」そう言ったら
「美加…何で恨み言の一つも言わないんだよ…」亨の方が泣き出しそうな顔をしている。