そのある人とは、肩まである黒髪を風に揺らし、少し幼さを残す横顔がとても愛らしいく、目も大きくパッチリしていてまつげも長い…。
今まで三次元で見てきた女子の中で、とびきりずば抜けた美少女だった。
(は、話しかけたい…)
俺の中にある、"男子"としての本能がうずうずとしている。
別に俺は女に飢えている訳ではない。
付き合ったことはないものの、告白されたことは幾度かある。
それでも付き合ったりしなかったのは好みのタイプがいなかったのと…あとは"二次元"にしか、興味がなかったせいだと俺は思う。
そんな俺にこんな思いをさせるのだから、かなりの美少女なわけで…。
そうこうしているうちに、その美少女は受付を終わらせてしまったのか、いつのまにやら列から姿を消していた。
華奢だったなあと思いつつ受付を済ます。
とんとんっ
ふぅっと軽いため息をつくと同時に肩を叩かれた。
というより、つつかれたという表現の方が正しいだろうか。
後ろを振り返るとさっきの美少女がー
「イケメンおにーさん?さっきからずーっと"オレ"のこと見てたよね?」
「へぁっ!?」
「見てたでしょ?」
「見てました!一目惚れです!」バッ
「…は?」
勢いで頭を下げ両手を差し出す。
周りの声なんて聞こえない。
自分の胸の鼓動の音が大きすぎてうるさい。
ドスッ
「いだっ!?」
「おにーさんさあ…"オレ"のコレ見てからそういう事言ってくれない?」
…?
聞き間違いでなければいま美少女の口から、美少女の声で"オレ"って…
そして頭をチョップされたであろう衝撃でくらくらしながらも、美少女が指をさすところを見る…と…
「ズボン…ですね…」
「そう、ズボン。意味、わかる?」
「男?」
「そうオトコ」
ふらぁっ
男、三城 章。
華の高校デビュー初日は、美少女ではなく美少年が履いていたズボンを見て一気に我に返り…
無残にも砕け散ったのでした…。