今日は会えるかな…
昨日唯に言われたとおり、あたしはカズくんに会ったら会話を続けてみようと心の準備をしていた。
「彩乃、おはよ」
「お、おはよ!」
勢いよく振り返るとそこにいたのは唯だった。
「唯か〜」
「なによそれ〜」
唯は笑いながらふてくされる。
「あ、もしかして山崎くんだと思ったの?」
ず、図星…
「いやいや、声を聞き分けてよ!」
たしかにそうだ…!
なんだか、恥ずかしくなってきた。
「今日は彩乃も話してみるんでしょ?」
「うん…」
「頑張るんだよ!」
そう言うと、唯は自分の席へ戻っていった。
唯も応援してくれてるし頑張らないと!
「唯、購買行ってくるね」
あっという間に昼休み。
今日はまだカズくんに会えていない。
カズくん、今日は休みかな〜
休みなのか休みじゃないのか確かめたいけど、聞きに行けないし、クラスも知らない。
いつも、廊下で会ってただけだからな…
そう思うと、あたしはカズくんのことをなんにも知らないことがわかってきて悲しくなってきた。
「彩乃!」
あたしを呼ぶ声が聞こえて、振り返ると後ろには話したことのない人がたくさんいて、誰が呼んだのかわからない。
「彩乃」
「カズくん…」
前を向くとカズくんが立っていた。
声が聞こえたのは後ろじゃなくて、前からだった。
「今からどこ行くの?」
「購買だよ」
「俺も購買!」
いつもなら、ここで「そうなんだ」って言ってるけど今日は頑張らなきゃ…!
「なら…一緒に行こうよ…?」
言えた…!
おそるおそるカズくんの顔を見ると、カズくんはびっくりした表情をしていた。
「あ、ごめん。なんでもない…」
きっと他に一緒に行く人がいるんだ!
それとも、あたしと行くのは嫌なだけ…?
どんどん嫌な方向へ考えてしまう。
「や、ごめん。一緒に行こう!」
え…
「いいの?」
「もちろん!ちょっと、嬉しくて…固まっただけ…」
嬉しい…⁉︎
びっくりして、カズくんの顔を見るとカズくんの顔は少し赤くなっていた。
嬉しいって言ってくれた…
嘘かもしれないのにそう言ってくれただけで嬉しかった。