「唯!帰ろ〜」



今日の授業が全て終わり、帰る準備をしていた唯に声をかける。




「あたし、掃除あるから外で待ってて!」






唯の言われた通りに、校舎を出て外で待とうと思ったあたしは玄関である人を見つけた。




教科書を拾ってくれた人だ…




友達と笑いあうその男の子は笑顔が輝いていた。




楽しそうに笑う笑顔につられてあたしも笑顔になり、外に出ようと歩きはじめたとき、後ろから声が聞こえた。



「教科書の子だよね?」



振り返るとさっき見ていた男の子だった。



「あ…さっきはありがとうございました!」



「どういたしまして。名前なんて言うの?2年生だよね?」



「高橋彩乃です…。2年生です」



いきなり名前を聞かれてびっくりしたけど、なんとか声に出して言えた。



「彩乃ちゃんか…。俺も2年で山崎一(かず)。よろしくね」



「よ、よろしくお願いします…」



またしても笑顔が輝いてる…!!



「またね」



笑顔を見せて去っていく彼に、あたしは呆然と見送ることしかできなかった。