誰も知る由もない、忙しない優月の心の乱気流。
一人憂鬱な気分でトイレから戻る途中での出来事が、さらにさらに心の中に強い風を吹かしていく……。
中庭へと向かう知っている背中に優月は気づいた。
ぴんと背筋の通った佇まい。
陸に違いない、という勘が働く。
クラスに戻る感じとは違う彼の様子に、興味本位で優月はそろりそろりと後をつけていく。
彼が辿り着いた場所で、一瞬で優月は後悔した。
何でついて来てしまったのか、何ですぐに陸だと分かってしまったのか。
そこは陸がいつも昼に訪れる、あの中庭のベンチ。
そしてベンチには、陸に柔らかく微笑む女子生徒が座っていた。
陸はビニール袋に入ったパンケーキと、チョコソースを持っている。
いけないと分かっていながら、優月はすぐにその場から離れられなかった。