自由勝手な里乃に呆れつつ、自分の手元に目をやると、優月の分も描いてくれたパンケーキ。


(全然嬉しくないし…。はぁ…)


ため息が漏れる優月。

むすっとするのも当たり前。



そこには、可愛い丸文字で【バカゆづ】、とご丁寧に書かれていたのだから。



「ぷぷっ。ゆづ愛されてんだねー」


「どこが?」


その文字を見ながら里乃は続ける。


「だって、仲良いから書けるんだよ、そういうの。本当に嫌いだったら書かない。でもさー、やっぱかっこいいじゃん。私のいとこと大違いだし。いいなー、陸お兄さん」




里乃に茶化されながらも、優月は内心では嬉しく思っていた。


『愛されてる』なんて、お世辞だとしてもその言葉だけで、もう顔が熱を持ちそうな程。




里乃にそう言ってもらえるだけで、憎たらしい文字も、だんだん可愛く見えてくるのだった。