陸は声をかけるのを一瞬迷ったが、思い切って声を発した。


「…気に入ったのか、そこ」


「相園君っ!?」



驚いて立ち上がる小柳。



「え、え…と、うん。そうだね。あまり人も来ないし、息抜きにいいよね。本当」


おどおどする彼女を前に、陸はすっとベンチに腰掛ける。


「もしかして、いつも放課後に来てる?」


「たまにね。一人になりたくて…。て、ごめんね。相園君の大事な場所なのに」


「いや、だからここは誰の場所でもないし、好きに使っていいと思うよ。にしても、親父みたいな発想だな。息抜きって」


陸は苦笑する。

それを見て、小柳も強張っていた表情を緩めてベンチに腰掛ける。


「えへへ。そうだよね」


「さっき具合悪そうだったよな。もう大丈夫?」


「うん、平気。…嘘だし」


嘘だと明言する彼女は開き直ったかのような、曇りの無い晴れやかな表情を浮かべる。