教室にいる時の小柳は、周りに気を遣いすぎて何だか窮屈そうに見えた。
ベンチに来ることで開放感に浸れるのは、自分だけではないのだということに、陸は少しずつ親近感が湧いていた。
けれど、気にかける理由はそれだけではなかった。
「ねぇ、栞ってまだ戻ってこないの?」
「本当だ。どこ行くって言ってた?」
「うーん、何だっけ。トイレじゃないよね。長いし」
「えーまさかサボり?」
「栞に限ってそれないでしょ。あ、また誰かにコクられでもしてるんじゃん。準備中の合間に」
「出たよ~。この間も5組の人に捕まってたの見たし」
「へー。今何人目?ヤバイよね」
「それで誰かと付き合うとかないもんね」
「そうそう。困ってる感アピってるけど、絶対どっかで優越感浸ってるよね」