得意分野が違う優月と、そんなとこは似ているのかもしれない。
あくせく動きながらも、陸はベンチにいるであろう小柳のことを気にかけていた。
(…まだ、戻ってこないか)
あの日以来、度々昼休み、小柳はベンチに来るようになった。
陸が誘ったわけでも拒否したわけでもないのだ。
彼女は陸の気持ちを汲み取ってか、いつも来る時は一人だった。
昼休みの少しの間だけ、二人は他愛もない会話をした。
小柳の飼っている猫の話だとか、担任の変な口癖だとか。
最初こそ話は長く続かなかったが、最近は自然と会話が生まれるようになっていた。
陸は大抵聞き役に回っている。
小柳は教室にいる時より、ベンチにいる時のほうが、随分おしゃべりで実に楽しそうだった。