「誰でしょうねー。てかさ、姫姫やめてくんない?…きしょい」


「わ、ひっでー。まじヘコむわー。ないわー。さすが腹黒姫」


「誰が腹黒姫じゃ!!」


「やーん、怖いわ」



いきなりオネェ気取りで、くねくね体を揺らす長澤。


そんなからかう彼を優月は叩くマネだけする。





陸とは違う戯れは、優月をホッとさせた。


でも意外にも勘が鋭い長澤には驚きもの。




彼とふざけ合っているうちは、陸への気持ちがぼやける気が優月にはしていた。





このままいっそのこと、陸への気持ちがなくなって、長澤を好きになれば…



(…ダメだ)


そんなことがふと頭をよぎったものの、すぐに自分の中で完全否定した。


(逃げる口実だもん…。最低)






その後、長澤は優月が一人で涙を浮かべていたことに触れることはなかった。