王子のごとく、バサリとマントをひるがえしながら教室に入ってくると、ちゃっかり優月の前にうやうやしく片膝をつく。
「お迎えに上がりました。優月姫」
そう言って、優月の手を取る。
「………」
優月は言葉が出なかった。
いつもなら、こんなジョーク、すぐさまツッコんでいたはずだ。
なのに、冗談だと思いながらも、彼の真剣な眼差しとその行動は、敏感になっていた彼女の揺れる心をさらに揺らしてしまった。
彼も彼女の予想外の反応に、少しきょとんとする。
「佐野…?ひょっとして、お前泣いてたのか?」
顔を覗きこもうと近寄る長澤に、びくっとして握られていた手を払いのける。
「あー、バカバカしい。死神が王子とかウケるわ。有り得ない」
「…。帰るのか?祭りはこれからだぜ?」