必死な顔をして、どこを走ってきたのか泥だらけで。
私を見つけた瞬間、その顔は見る間に笑顔に満ちて…、目尻を思いっきり下げて笑う王子…。
こんな想像は痛々しいと優月自身も思っている。
でも、せめて想像の中だけでも、自由に素直に恋をしていたいという思いは、隠しきれずにいた。
ふっと現実に戻る間際、涙がこみ上げる。
その時、教室のドアが開いた。
入ってきたのは…、王冠をつけた……………、死神だ。
「佐野…ちゃん?…え、うそまじ?優月姫!」
長澤はよほど気に入ったのか、死神マントをまだ羽織ったままでメイクもそのままだ。
優月はとっさにティアラを外す。
でも、まさか彼がこんな絶妙なタイミングで現れるとは思ってもおらず…。