適度に保たれた冷房と暗さになれた視界が心地良い。


しばらくして、聞き覚えのある声に目が覚める。




「和真先行ってよー」


「なんだよ、お前もう知ってんだろ」


「いいじゃんいいじゃん。早く早く」



この声は里乃と後藤だ。

いつもと違う里乃のはしゃぎっぷりに、何だか聞いてはいけない気持ちになって気まずい。



もう公開時間が終了する時間だ。


優月はよしっと心の中で意気込むと、呪文が書かれた紙が挟まった辞書を、急いでダンボールの壁の中へ隠した。



「あれ、ここじゃなかったか?呪文の紙」


「そうだよ。今日新しい場所に移したんだよ。…ないね」


困惑した二人に、しめしめと悪い顔をする優月。


(ふふふ。この調子でいけば…)




「お前達はもう逃げられない、今ここで死の国へ連れて行ってやる…!」