「じょ、冗談…。あんなの、キスのうちに入んないし」


顔が熱を帯びていくのがわかる。


「へーえ。じゃあさ、どんなのがお前のキスなの?教えてよ。俺に」


優月を囲うように大きく黒いマントを広げ、周囲を遮る長澤。


「え、ええ…?教えるって、バカじゃないの?何言ってんの。てか、からかわないでっ」


「やーだ」


「はあ?」


「佐野、超おもしれーもん。お前みたいな奴他にいねーし。…腹黒ちゃん?」


「っ…またそれ!」


「ふふ。今度は誰もいないとこで…。な?」




その悪魔のような囁きはまさに、死神にはまり役だと心から思ったが、その言葉を最後に突如目の前が真っ暗になった。


「ちょっと、何これ?見えないっ!長澤君?うあ~、ほんとやめて!」


暗く体にのし掛かる謎の重みの中で、必死にもがいていると、パッと視界が明るくなり、体も軽くなる。