Yシャツを着てネクタイをきちっと締め、革靴をコツコツ鳴らし颯爽と歩く様は、サラリーマンの朝の通勤姿とそう、変わらないだろう。
だけど、大きな違いが一つ。
親ばかだと自負している彼は、まだ普通に高校に通っている、現役男子高校生なのだ。
彼の名は、相園 陸(あいぞの りく)。
高校3年。
成績は常に学年トップ、学級委員もこなし、絵に描いた通りの硬派な道を突き進む彼は、実はイクメンという一面も兼ね備えているわけである。
そんな彼の子供の名は瞬(しゅん)。
今年2歳を迎える、よくしゃべりよく笑う元気いっぱいの男の子だ。
彼らは祖父と祖母の四人で暮らしている。
そこにもう一人。
先ほど朝からテンパっていた、同居している彼女はというと…、陸の妹、ではなく、かと言って居候する友達、でもない。
では陸の奥さんで瞬の母親か、と言えばそうでもない。